考古学的知見や、民族学的アプローチをふまえつつ、炎と粘土が出会って生まれた陶磁器をめぐる起源の物語が、寓話性をまといながら、やがてロマン溢れる詩的な展開となり、観る者を惹きつける。

柴田監督の『千年の一滴 だし しょうゆ』においては、味の秘密を「科学」の目で見せてくれた。ミクロな微生物が生み出す世界を、ダイナミックにひきだした表現が強く印象に残った。

いっぽう、今作では、原始的な土器から、陶器、陶磁器が生まれるまでの経緯を、地球そのものを「素材」と捉えたダイナミックな映像が、多彩なスキルで描きあげられている。まさに、柴田監督のビジョンと「技」が凝縮された作品だ。

広大なユーラシア大陸の東と西の、風土と自然が生み出した土、あるいは岩、石といった材料から器を創造していく姿。そこには、ただ物を作るという行為だけではない、崇高な神への信仰心から美が生まれ、やがてその「美意識」から、「美味しさ」への追求という食文化も生まれたことを、気づかせてくれる。

さらに、純粋な信仰心だけではなく、ときに虚栄心や権力欲から来るものかもしれないにせよ、人間という存在が不可避的に持っている芸術的探究心、美味しさへの探究というものの誕生の秘密のようなものさえ、この映画で感じとることができた。

だからこそ、陶王子の紹介してくれる通り、粘土を捏ねあげた瞬間から、宇宙船までもが、この作品のなかで違和感なく繋がっていることがわかる。

いくつもの表情を陶王子が、情緒に流されない、客観的でクールな語りで、寓話的な世界観を呼び込みつつも、時空を超えた、新たなドキュメンタリーの可能性を開いてみせてくれた。

一品の料理を盛り込む、ちいさな器に込められている2万年の物語が、世界中の料理を愛するひとたちに届きますように。